ターボ機械3D設計システム CFturbo
ダクト付き⼆重反転ファンの空⼒設計
クリストファー・サンズ、ラルフ・ピーター・ミューラー、CFturbo, Inc. (ニューヨーク州ブルックリン) 2022.03.09
Photo Boris Kubrak, Ph.D., Brooklyn, NY
動機と⽬的
eVTOL(電動垂直離着陸機)や軽量ハイブリッド航空機の現在の開発では、新たな推進システムが求められています。ダクト付き⼆重反転ファンは、コンパクトで⾼効率かつ低騒⾳の電動航空エンジンとしての選択肢の1つです。
この事例では、CFturbo を⽤いた設計および CFturbo SMP を⽤いた3次元流体シミュレーションにより、500N推⼒システムの空⼒設計をご紹介します。⽬的は、従来の単段軸流ファン(固定翼あり・なしの両⽅)に⽐べ、より⼤きな出⼒と⾼効率を、より低い回転数で実現するダクト付き⼆重反転ファンを設計することです。
CFturboによる概念設計
ダクト付き⼆重反転ファンは、前列インペラによって発⽣した運動エネルギーを、後列インペラ内で相対速度を静圧に変換することによって回収できるため、より単純で従来のファンよりも望ましいといえます。この⾰新的なダクト付き⼆重反転ファンの設計により、より低速での空⼒性能の向上と、全体的な電⼒要求の低減が可能となり、さらにインペラ直径を⼩さく抑えることができます。
図A: CFturbo ⼆重反転ダクト付きファン設計
図B: 側⾯図 図C: 全⾯図
設計パラメータ
|
単段 + ガイドベーン |
⼆重反転、2段インペラ |
推⼒ |
500 N |
500 N |
体積流量 |
5 m³/s |
5 m³/s |
定格回転速度 |
12,000 rpm |
10,000 rpm |
インペラ直径 |
340 mm |
300 mm |
流体シミュレーション
CFturbo 内で、⼆重反転ファンは、体積流量 5 m³/s、推⼒ 500N、回転速度 10,000 rpm の条件で初期設計されました。これは、おおよそ 208(EU) の⽐速度に相当します。
ファンの性能曲線を評価するために、CFturbo SMP(Simerics MP) を⽤いて、定常状態および⾮定常状態の数値流体⼒学(CFD)シミュレーションを、体積流量および回転速度を変化させながら実施しました。数値計算上の理由から、流れ領域には⼊⼝側に直径の1倍(1×D)、出⼝側に直径の3倍(3×D)の領域が追加されました。
定常状態のシミュレーションでは、500 イタレーションと、速度・圧⼒の両⽅に対して⼀次⾵上差分スキームを使⽤しました。⼀⽅、⾮定常状態のシミュレーションでは、360 タイムステップ、速度に対して⼆次⾵上差分スキーム、圧⼒に対して⼀次⾵上差分スキームを適⽤しました。メッシュは約470 万セルでした。
主な結果
ファンの空⼒性能に関するデータは、CFturbo SMP(SimericsMP)から算出され、下図にプロットされています。ダクト付き⼆重反転ファンの基本設計は、初期の設計点を⼗分に満たしており、前列インペラの⼊⼝から後列インペラの出⼝までの段落内で、およそ12,000 パスカルの全圧差を確保しています。
図G は、定常状態のシミュレーション結果が過渡(⾮定常)シミュレーションの結果と⼀致していることを⽰しており、低流量域では若⼲の差異が⾒られます。段落内の全圧差に関する結果は、軸流機器に典型的な性能
曲線の形状を⽰しています。
段落効率の結果は図H に⽰されています。全体として、ダクト付き⼆重反転ファン内のインペラは⾮常に⾼効率であり、動作範囲内のすべての回転速度において空⼒効率のピークは90%に達しました。無旋回の流出は、⼆重反転型のターボ機械に特有の特徴であり、推進⽤途に適した選択肢です。ダクト付き⼆重反転ファンの必要動⼒の結果は図I に⽰されています。
必要動⼒は、回転速度の増加に伴って増加します。段全体でほぼ同等の効率と、全圧差における設計点を上回る性能が確認されたことから、設計者は、より低い回転速度でインペラを回転させるダクト付き⼆重反転ファンを選定することで、必要動⼒を抑えつつ設計点を満たすという判断を、⾃信を持って下すことができます。
図E: 圧⼒分布 – CFturbo SMP(定常解析、5 m³/s、10,000 rpm)
図F: CFturbo SMPにおける圧⼒と流線(過渡解析、5 m³/s、10,000 rpm)
第2ステージのファンの下流に旋回流なし︕
図G: 段落における全圧差
図H: 空⼒効率(段落効率)
図I: 軸動⼒
各インペラにおける全圧差および効率の結果は、図J、K、L、Mに⽰されています。
動⼒および効率の計算において、全運転範囲で定常解析と過渡解析の結果に典型的な差異が認められます。
前列インペラは、動作範囲内のすべての回転速度において後列インペラよりやや優れた性能を⽰しています。しかし、本設計は最初の概念設計であり、最適化を⼀切⾏っていないにもかかわらず、約90%という⾮常に⾼い空⼒効率を達成していることは注⽬に値します。
さらなる設計検討は、⼿動による反復的なプロセスで⾏うことも、CFturbo を他の最適化ソフトウェアと組み合わせた数理アルゴリズムを⽤いて実施することも可能です。CFturbo は、optiSLang(Ansys)、HEEDS(SIEMENS)、DAKOTA(オープンソース)などと良好に連携します。
図J: インペラ1における全圧差
図K: インペラ2における全圧差
図L: インペラ1における空⼒効率
図M: インペラ2における空⼒効率